好きなことして生きるのか?

今は好きなことだけして生きていける時代だ.SNSや動画やラジオなど,色々なメディアで発信するほとんどの人たちが,そう指南している.好きなことがないので好きなことを見つけないといけない,と焦る人が年代を問わず増えているという.でも,本当だろうか.確かに好きなことで生きている人たちは笑顔が多く幸せそうだが,好きなことをしないと生きていけない時代,というわけではなさそう.好きなことをして生きていくしかない,のではないのだ.

好きなことをして生きよ,と発信する人たちは,知識や情報の発信を仕事にする人たちだ.なるほど,知識や情報を提供し続けるには,好きなことを好きであり続ける必要がある.好きなことを持っていることが発信の最低条件になる.この知識や情報を発信する仕事も,実は大変だろうと思う.もし好きなことへの情熱が消えてしまったら,発信の動機づけを失ってしまったら,発信する知識や情報を探求する心が消えてしまったら,仕事が続けられず,たいそう辛いだろう.

実は,好きなことをして生きよと説く人たちは,全員そうしなさいと言っているのではない.一部の,探求する情熱で生きたい人に向けて言っているにすぎない.社会から必要とされ続ける人とは,本当は,楽しくもない仕事を毎日きちんとこなす人である.ごみ収集,警察や消防,ATMなど稼働中の情報システムの管理保守,建設土木,運輸など挙げればきりがない.必要とされ続ける仕事は,社会にいくらでもある.好きでもなく楽しくなくても,社会に必要とされる仕事で働く人はいつまでも求められるし,重要な仕事だと誇らしく思うことも決して不幸せな考え方ではない.

知識や情報を必要とする人は多い.これからもそうあり続けるだろう.でも,好きでもない仕事も必要とされ続ける.知識や情報を発信する自営業にも,辛い時はある.結局,好きでもなく楽しくもないが,自分には無理なくそこそこの生活ができているなら,それはいい仕事であり,自分に合った仕事をしていることになる.好きなことを持つことだけが答えではない.好きでもない仕事も,一人前にできてくれば,それなりに楽しいと感じられるものだとそう思う.

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